クリーンビューティについて
〇クリーンビューティの定義や要素
クリーンビューティ(Clean beauty)の言葉には、天然成分、肌に無害、動物に優しい、環境に配慮といったイメージが持たれますが、その意味は定義づけられていません。クリーンビューティと呼ばれる多くのものには、排除する成分をリスト化し、動物実験をせず、廃棄物を最小限にする取り組みが見られます。しかし、業界の専門家でさえクリーンビューティを定義することは難しく、それだけ人や企業によってポリシーが異なります。
クリーンビューティは、オーガニックやナチュラル、ビーガン、植物由来、さらには小ロット生産などと混同されることもよくあります。そこで、ブランドや企業は、それぞれが独自でクリーンビューティに対する考え方を明文化し、行動基準を定めています。それぞれに違いがありますが「化粧品が人や動物、環境に害があるものではいけない」という考えた方は共通しており、次のような要素を満たしています。
●健康に害のある成分を使用しない
●動物に配慮し動物実験をしない
●環境に配慮する
●公正で透明性のある取引や情報提供を行う
つまりクリーンビューティとは、人の健康を害さないことはもちろん、
サステナブルでフェアトレードが実践された製品ということです。その化粧品に関わる原料調達から使用後の処分に至るまでの全ての段階において、倫理的であることと、動物や環境の保護が念頭にあります。
〇「クリーンビューティ」が生まれるまで
イギリスやアメリカを中心にクリーンビューティの考え方やそれを製品に反映させたブランドが生まれました。従来、消費者は成分表示を見て、安全か、余計なものは入っていないか、を見極めるしかありませんでした。現在もそれが一般的ですが、2000年に入り有害とされる成分を排除したブランドが誕生(例:イギリスのRen Clean Skincare)し、消費者が一つひとつの成分を確認するまでもなく、そもそも健康を害すると言われる成分は使われていないという製品が出てきました。
他にも無害やピュア(純粋)、安全といった言葉を訴求し、成分にこだわったクリーンビューティに通じる小さなインディーズブランドが出始めました。当初は広まることはありませんでしたが、類似した考えのブランドが増えるにつれ、そういったブランドや製品のみを取り扱う小売店(例:Credo beauty 2015年サンフランシスコに1号店)が現れ、消費者意識も高まりました。
その動きは、大手流通業や大手化粧品メーカーにとっても無視できる存在ではなくなり、大手流通業者が独自で禁止成分リストを作成し、その基準に当てはまる製品には「クリーン」を意味するアイコンをつけたり(例:セフォラ)、クリーンビューティベストコスメを発表したり(例:アマゾン)し、大手化粧品メーカーは小さなクリーンビューティブランドを傘下に迎え入れたり、環境保護団体の基準を満たす製品を開発するなど、業界全体で大きく動き出し、2019年にはアメリカを中心にクリーンビューティの言葉を普通に見聞きするようになりました。
〇クリーンビューティ需要の高まりの背景
クリーンビューティは、ウエルネスや
クリーンイーティング(Clean eating)の考え方、環境問題に対する意識などを背景に、世界中で高まる化粧品に対する規制強化意識が後押しになっていると考えられます。
また、技術の進歩により従来のブランドに匹敵する
使用性や
効果効能が実現するようになったことも、従来の製品からクリーンビューティへ移行する消費者が増えた理由の一つと言われます。
ナチュラルやオーガニックは成分だけに注目されますが、クリーンビューティでは成分が安全であっても倫理や環境保護の観点で問題があれば、それはクリーンビューティとは認められません。製品に関わる全ての局面においてクリーンと言えることが重要です。
〇クリーンビューティの成分
クリーンビューティはできるだけ人の手を加えない成分、つまり天然成分が支持されますが、「クリーンビューティ」の言葉が発祥したアメリカでは、クリーンビューティでは天然成分を支持しながらも、人や地球にとって安全とみなされる化学合成物は活用するという業界コンセンサスがあります。つまり、クリーンは必ずしもケミカルフリーではありません。
実際、クリーンビューティを主張するスキンケアブランドの成分は天然化合物がほとんどですが、安全性が認められている合成化合物も使用されています。その点は、オーガニックやナチュラルを標ぼうするブランドでも同じ場合がありますが、クリーンビューティにおいては「天然」vs「合成」という考え方を超えています。クリーンビューティは、人の健康や
サステナブルの観点で特定の論争の的となるような成分が一切含まれていないことが重要です。
そのために排除する成分は、人にとって安全であることに加え、持続可能な調達ができなければなりません。例えば、蜂の個体数減少の問題からハチミツやミツロウは使用可能としてもローヤルゼリーは使用不可とする、天然鉱物は採掘時に重金属に汚染されている可能性や生態系への悪影響、児童労働などが行われていないことまで考える、といったことです。このようにして排除される成分は、ブランドや流通業(販売店)によって異なります。例えば、ある製品は、A流通業ではクリーンビューティと認定されても、B流通業で制限されている成分が含まれていることがあります。また、世界で最も厳しいと言われ1300以上の成分規制するEUを大きく上回り、2700以上もの成分を規制している流通業もあります。
専門家の中には、クリーンビューティは安全で有効な化学物質を不必要に悪者扱いするマーケティング戦略に過ぎないという意見もあります。その成分が有害だという根拠がない、容量や濃度を考えていない、パラベンをはじめとした防腐剤を拒絶することで新たな皮膚トラブルが発生する、などといった今までも成分論争になるとよく聞かれるような意見も見られます。