ブロードスペクトラムについて
〇ブロードスペクトラムについて
「Broad Sspectrum」は、
SPF15以上かつ臨界波長が370nmを超える日焼け止め製品に許可される訴求です。
日焼け止めで
UVA防御効果をあらわす方法に、日本では
PA表示がありますが、アメリカやオーストラリアなどでは、このBroad Sspectrum表示をもってUVA防御効果があることが示されます。PA表示はUVAのみの防御効果を示すのに対し、Broad Sspectrum表示はUVAも含み、文字通り幅広い波長を防御すること、つまりUVBとUVAの両方を防御することを意味します。
ブロードスペクトラム製品として認められるには、臨界波長試験に合格する必要があります。臨界波長試験は、分光光度計を用いた
in vitro試験です。国によって対象製品や試験の手順、Broad Sspectrum表示条件などに異なる点はありますが、基本的には
ISO規格(ISO 24443)に準じた試験です。
分光光度計を使用し、対象の日焼け止めの波長ごとの光の吸収度合いを測定します。その度合いが高いほど、その波長に対する防御力があると言えます。日焼け止めに紫外線を照射し、290nm〜400nmの波長ごとに測定、算出された数値は吸光度として、縦軸が吸光度(上にいくほど吸光度が高く、その波長からの防御効果が高いといえる)、横軸が波長を示すグラフに落としこまれます。この波長ごとに落とし込んでできた吸光度曲線グラフ(紫外線吸収スペクトル)の下の面積が、290nm側から90%となる波長を臨界波長とし、この臨界波長が370nm以上であることがBroad Spectrum製品と認められる条件です。
〇アメリカの例
アメリカでは日焼け止め製品は
OTCに該当します。2011年にこの
FDA基準が制定される前は、UVA防御効果を示す表示が特に定められておらず、日本メーカーは、日本国内と同じ
PA値をつけた日焼け止めを販売していたこともあります。現在はBROAD SPECTRUM表示に切り替わり、PA表示は認められません。また、Broad Sspectrum表示に続けてSPF値を表示することが必須であり、ブロードスペクトラムの表現だけで防御効果訴求することはできません。
FDAでは、日焼け止めのモノグラフの中でパッケージ表示についても細かく定めており、表示する内容のほとんどは決まっています。
SPF15以上かつブロードスペクトラムに該当する日焼け止めの場合、「日焼け止めの使用と合わせた紫外線対策をすれば、太陽の下で過ごすことによる皮膚がんと早期皮膚老化リスクを低減できる」という趣旨の表示をします。あわせて「太陽の下で過ごす時間は午前10時から午後2時までに制限する、長袖シャツと長ボン、帽子、サングラスを着用する」といった紫外線対策の記載が必須です。また、「日に当たる15分前にたっぷりと塗る、最低2時間ごとに塗りなおす」といった使用法に関しても記載義務があります。
一方、SPFが高くてもブロードスペクトラムでない製品とSPF14以下の製品は、「UVBから肌を保護する」にとどまる趣旨の表示が求められます。具体的には、「日に当たると皮膚がんや早期皮膚老化のリスクが高まるものの、この製品は
サンバーン予防にのみ効果があり、皮膚がんや早期皮膚老化の予防には役立たない」という警告表示を記載する義務があります。
〇オーストラリアの例
オーストラリアでは、紫外線防御効果のある製品は、OTCに当たる治療用日焼け止め(SPF4以上)と化粧品日焼け止め(日焼け止め成分を含むSPF4以上のリップ製品や下地、ファンデーションなど。あるいは日焼け止め成分を含む保湿製品など)に分かれます。紫外線防御が主目的の一般的に日焼け止めと呼ばれる製品は、治療用日焼け止めに該当するOTC製品です。この治療用日焼け止め、およびSPF30以上の化粧品日焼け止め製品は、ブロードスペクトラム対応が必須です。
臨界波長試験試験による吸光度曲線において、曲線の下の面積が90%の領域における各波長の吸光度の度合いは製品によって異なります。UVB領域での吸光度が非常に高いもののUVA領域での吸光度が低い可能性もあり、Broad Sspectrum表示だけではUVA防御能の高さが期待レベルに見合うかどうかの判断ができません。そこでオーストラリアでは、ブロードスペクトラムだけでなく、
3分の1ルールにも準拠していることが求められます。
オーストラリアでは、SPF4以上の日焼け止めとSPF30以上の保湿スキンケア製品には、EU規制と同じく臨界波長370nm以上かつ
UVAPF/SPFの比が1/3以上を満たすことが求められるということです。
表示に関してもFDAと同じように細かく取り決められています。SPF30以上かつブロードスペクトラム製品は、「長時間日光にさらされることを防ぐ、長袖長ズボンや帽子およびサングラスを着用する」ことの大切さを強調した上で、「一部の皮膚がんの予防に役立つ可能性がある」「一部の皮膚がんのリスクを低下させる可能性がある」といった表示が可能です。また、「日光角化症の予防に役立つ」「紫外線によるシミ(sunspots)の予防に役立つ」といった趣旨の表示も可能です。
SPFが4以上かつブロードスペクトラムの日焼け止めの場合は、「皮膚の早期老化防止に役立つ」という表示ができます。
「長時間日光にさらされることを防ぐ、長袖長ズボンや帽子およびサングラスを着用する」「日を浴びる20分前には十分な量を塗布する。少なくても2時間ごと、さらに汗をかいたりタオルで拭いたら塗り直す」といった注意表示も日焼け止めに必須です。
参考資料:
- FDA公式サイト
「OTC日焼け止めの表示と有効性試験の小規模事業社向けコンプライアンスガイド」(2012年12月)